チバPのブログ

もう、このまま突っ切るぞーヽ(*´∀`)

ちゃっかり者のキノコたち

こんにちはー、チバPです。

キノコって⋯なんかいい⋯と思いませんか?チバPはちゃっかりしてるなー(ほのぼの)って感じています。

隙間を見つけてチョッコリと生きているから競争しない感じがして⋯うん。ほのぼのしてるー!

自分の良いように生えてるって気持ちが良いだろうなー。

と、いうわけで、今回はキノコが準主役の小説です。ぜひ、チラリと覗いていってくださいな。

壁キノコとボク

日曜日の夕方。僕は家の縁側に座って、フーとため息をついた。明日からまた、学校が始まってしまう。

「嫌だなぁ。学校なんか全然行きたくなんか無いのに。きっと僕は自由を奪われた哀れなかごの中の鳥なんだ。そしてきっと、僕の自由の羽は萎れきっていて、もう飛べやしないんだ!⋯おい、聞いてるのかよ壁キノコ!明日から僕は学校なんだぞ!最悪すぎるよー!」

僕は壁キノコに向かって叫んだ。学校なんて滅んでしまえ。壁キノコは知らん顔して僕の隣に立っていた。壁キノコは僕の足首くらいの伸長だ。

「何だよ、無視するなよ。僕がこんなに悲しんでいるのに薄情な奴め!」

僕は建物の隙間から見える暮れゆく夕日の光を見ながら悪態をついた。すると、下から声が聞こえてきた。

「毎週毎週うるさいんだよお前は。そんなことよりさっきのアニメは面白かったな。おい、明日続きを借りて来いよ!」

壁キノコは小さな身体を揺らしながらとっても薄情なことを言った。

「水曜日にしか借りてもらえないんだよ、壁キノコだって同じことばっかり言っているじゃないか。僕は自由にアニメだって見られやしないんだ。だって僕はかわいそうなかごの中の鳥なんだからね。」

僕は悲しみを分かち合ってくれない壁キノコに言ってやった。

壁キノコは僕の家に勝手に、にょっきりと生えてきた、奇妙な喋るキノコだ。僕が初めて壁キノコと出会ったのは、一年ほど前の夜、僕が洗面所で歯を磨いていた時だった。鏡を見た僕は、偶然に鏡に映る、壁キノコを見つけた。驚いた僕は、鏡越しにジーッと見つめた。すると、

「見てんじゃねえよチビ!」

壁に生えたキノコは僕に向かって叫んだのだ。そして、僕はさらに驚き、思わず歯磨き粉を飲み込んでしまった。当時の僕は、歯磨き粉は強い毒だと思い込んでいた。「歯磨き粉を飲んじゃったよー!うえぇ、気持ち悪い。死んじゃう!僕は死んじゃうんだー!」僕は怖くて震えていた。持っていた歯ブラシは、洗面器の中に落っことしていた。僕のうろたえ様を見た壁キノコは、さすがに悪いと思ったのか、僕を慰めようとしてくれた。

「何だよ、歯磨き粉なんて。そんなもん飲み込んだって死ぬもんか。ビビッてないで早く牛乳を飲むんだよ!牛乳はな、歯磨き粉よりも強いんだ!牛乳がお前の腹の中で歯磨き粉をやっつけてくれる!」

僕は壁キノコの言葉を信じて、とりあえず口をゆすいだ後、牛乳を飲んだ。これが僕と壁キノコの出会いだ。壁キノコの名前は、初めて見た時に壁から生えていた事から僕が名付けた。

月曜日。僕は仕方なくトボトボと学校へ行った。僕は小学生なのだ。仕方が無い。何だかんだしているうちに、嫌いな学校は終わった。時間が経てば、嫌だけれども学校は終わるのだ。家に帰ると、壁キノコは縁側でのんびりと日向ぼっこをしていた。家の中に入ると、僕は茶の間で本を読んでいるおじいちゃんの隣に座り、今日の学校での出来事を話した。おじいちゃんは無口だけども、僕の話をちゃんと聞いてくれる。そのうちにおばあちゃんも買い物から帰ってきて、僕はおじいちゃんおばあちゃんと一緒におやつを食べた。

おやつを食べ終え、僕は自分の部屋に入った。今日も今日とて宿題はしっかり有るのだ。壁キノコはいつの間にか縁側から僕の部屋に移動し、座ってテレビを見ていた。壁キノコは座ることも出来るのだ。壁キノコは頭の先を使ってテレビのチャンネルを4チャンネルに回した。

「しまった!もう始まっていたのか!おい、うるさいな!オープニングが聞こえないだろ。」

壁キノコは先週の火曜日から始まった再放送のドラマを見ている。特にオープニングが好きらしいが、僕には良さがいまいち分からなかった。僕は壁キノコなんかほったらかしにして、漢字の宿題を始めた。コマーシャルになると、壁キノコはぼくの机によっこらせと移動して来た。そして僕のノートを見ると「ぷふふ」と笑った。僕は壁キノコを睨んだ。

「何が可笑しいんだよ。お前に漢字の何が分かるっていうんだ。僕はお前に笑われるような漢字は書いちゃいないだろ?」

壁キノコは僕の言葉を無視すると

「あ、始まっちゃった。」

と、またテレビの前に座り、画面をじぃっと見はじめた。クソ!壁キノコめ!僕は自分の漢字ノートをじっくりと見直してみた。しかし、何が可笑しかったのかさっぱり分からなかった。

壁キノコは僕の家の中ならどこにでも姿を現す。特に縁側がお気に入りらしく、雨の日も晴れの日も縁側にいる。しかし、風が強い日は飛ばされては一大事だと言って、家の中で生えている。壁キノコは生えたり、立ったり、座ったり、寝っ転がることも出来る。壁キノコが生えている時と立っている時の区別は、壁キノコの頭の形で分かる。立っている壁キノコは頭がシュッとして少しスマートに見える。生えている時はいつも通りにまん丸だ。

ドラマが終わり、僕は壁キノコになぜ僕のノートを見て笑ったのかを聞いてみた。「ああ、それはドラマでな、渡辺という意地の悪いやつが絵美という美人さんにきっぱりと振られたんだ。ざまあみろだ!しかし、展開が速かったな。振られるとしても、もう少し後だと思っていた。まあ、気分は良いけどな。」

壁キノコは夕日にでも当たってくるかと言って、さっさと僕の部屋を後にした。僕はあっけにとられていた。なんてやつだ。なぜわざわざ僕のノートを覗いてから笑ったんだよ!なんて意地が悪いキノコだ!僕は、渡辺という人間に同情した。壁キノコよりも意地が悪い人なんかいるものか。

雨がしとしと降る日曜日だった。壁キノコは機嫌よく縁側に生えていた。僕は家の中から壁キノコの姿をスケッチしていた。壁キノコは雨が降ると少し体が大きくなる。何故なのかを壁キノコに聞いてみたが、壁キノコは自分の姿に興味が無いらしく、「そんなこと知るか。これだから暇な奴には参るんだ。」と言っていた。少なくとも僕は、壁キノコよりは絶対に忙しく生きている。

ある水曜日の事だった。僕は学校で、とてつもない恥をかいてしまった。学校から帰った僕は茶の間には行かず、自分の部屋に入ってしくしくと泣き始めた。すると、壁キノコが僕の足元に生えていた。僕はこらえきれずに壁キノコに心の内を話した。「もう取り返しがつかないんだ!僕は学校に⋯とうとう行けなくなっちゃったんだよー!うう~。僕はきっとフリョウになっておじいちゃん達をしくしく泣かせてしまうんだー!」

それを聞いた壁キノコは、生えるのを止め、「お前はまったく無駄が多い奴だな。何があったのかさっさと話せ。」と言ってくれた。僕は、クラスの話し合いで黒板係に選ばれたこと。そして何故かとっても簡単な「川」という漢字を忘れてしまい書くことが出来なかったこと。みんなに笑われてしまったことを壁キノコに話した。話を聞き終わった壁キノコは移動して、机の上に生えると「なんだそんな事か。大したことは無いな。俺様が解決してやる!さっさとノートと鉛筆を出せ。」と言った。僕は言われたようにした。壁キノコは僕に、そのノートに二回、川という漢字を書けと言った。僕は言われた通りにした。壁キノコはわざとらしくゆっくりと座り直すと、

「よし!これでお前は勝った。お前は黒板に一回書けなかったからな。二回ノートに書いてしまえばお前の勝ちだ。これでお前は明日からもしっかり、嫌いな学校に行くことが出来る!」と、うなずきながら言った。僕は納得がいかなかった。

「僕は恥ずかしくて学校に行けないんだ!勝ったって意味ないんだ!」

僕は鉛筆を握りながら叫んだ。壁キノコは「これだからチビは。」

と言って立ち上がった。

「いいか?お前は一度、川が書けなかった。つまり負けたのだ。そしてお前は負けて恥ずかしくて学校へ行けなくなった。しかし!お前は勝った!逆転したんだ!もう恥ずかしいことは無い。むしろ誇らしい。だって逆転だぞ?逆転サヨナラホームランだ!」

壁キノコは僕に向かって胸を張って演説した。僕は壁キノコの話を聞いているうちに、何だかよく分からなくなっていた。壁キノコの言うように、きっと僕はサヨナラホームランで逆転できたのだ。僕は壁キノコにお礼を言った。

「ありがとう壁キノコ。僕は君のおかげでフリョウにならなくてすんだよ。何だか分からないけど、気分も良くなった。」

僕は不思議とスッキリした気持ちになっていた。壁キノコは、

「まったくお前は世話の焼けるチビだよ。俺様は苦労しっぱなしさ。それよりも、今日はツ○ヤで例のアニメを借りて来る日だったよな?必ず借りてくるんだぞ!絶対だぞ!」とテレビの前に移動しながら壁キノコは言った。そろそろお気に入りのドラマが始まるのだ。僕は壁キノコのために必ず続きを借りてこようと思った。